突然降り始めた雨のおかげで適当な場所へ避難せざるを得なくなった。
運がない日だ。
容赦なく降る雫にこういうのが‘どしゃ降り’っていうのかと思わされた。
00.再会の時
近道をしようと裏路地に入ったから罰が当たったのかもしれない。
ただ買い物に出かけただけで焦っている訳ではなかったのに。
路地に入ってから急に曇りはじめ雨になるのはあっという間だった。
店先の屋根に飛び込んでみたものの、全身ずぶ濡れの状態になってしまった。
水分を含んだYシャツとスカートは普段の何倍も重たく感じる。
スカートの端を軽く絞りながら背後の扉を見る。
屋根があれども強すぎる雨はまだ体を少しずつ侵食していく。
中で雨宿りさせてはくれないだろうか。
ここに駆け込んだとき目立つピンクの電灯
(本当に目立つものだから思わずここに飛び込んだ)があった。
確か「devil may cry」と。
どんな店かは知らないがこれ以上ここにいても延々と濡れるだけ。
少々不安もあったがもう一度スカートを絞り直して扉の取っ手に手をかけた。
「こんなどしゃ降りの雨の日に来るなんて変わった客だな」
扉を開けた時に聞こえた一言。
中には真っ赤なコートを着た銀髪の男が一人。
机に足を投げ出した体制でふんぞり返っていた。
青の目が真っ直ぐにこちらを捕らえ、不敵な笑みを携えている。
事情を説明しようと中に入ると男は高く口笛を吹いた。
「で?どんなご依頼だい、水も滴るかわい子ちゃん?」
ウィンク付きで言われ自分の顔が少し赤くなるのが分かった。
整った顔立ちの人だと思った。
「あの…突然雨が降ってきたんで傘が無くて…
少しの間雨宿りさせてもらえませんか?」
「あぁ、アンタみたいな可愛い子なら大歓迎だ。
シャワーは奥行った突き当りを左だぜ?」
と、親指を立てて奥にある廊下を指している。
「い、いえ、そこまでしてもらえなくても大丈夫ですっ」
「なんだ?覗いたりしねぇから安心しろって」
「いや、そういうことでなく」
そこまでしてもらう事に抵抗があった。
それにこの人が信用できるかはまだ疑問の域だ。
どう伝えれば良いものかたじろいでいると店主と思われる男は席を立ってこちらに近づいてきた。
「服も貸してやんねぇとな」
「えっいや、本当に大丈夫ですよ!?
そこまでされたら申し訳ないし…」
距離を取ろうと一歩後ずさると彼も一歩進んでさらに距離を詰める。
体が密着するまでもう拳一個分程。
恥ずかしさから目を逸らしたいのに男の目はそれを許さない。
「俺的には構わないけどな。
そんなウマそうな格好でいてくれたら遠慮なくいただくぜ?」
「格好…?……っ!!」
反射的に男に背を向ける(いや、特に効果はないのだが)。
指摘された自分の身なりは白いシャツがはっきりと透けていた。
スカートを絞っている時に何故気付かなかったのだろう。
背後の男は意地悪く喉の奥で笑っている。
男の指先が自分の背中をつと撫ぜた。
「…じゃ、さっそく…」
「っ…シャワーお借りしますっ!!」
危機感を覚え、走って廊下の奥を目指した。
背後で男がまた笑ったのが聞こえた。
温かいシャワーを浴びてから初めて自分の体が冷えきっていたことに気付いた。
体温の上昇と共に意識が少し朦朧としてくる。
ふと突然、今朝見た夢のことを思い出した。
「大丈夫だ」
「またこっちに来るんだろ?」
「絶対に会える。約束する」
「ずっと帰ってくんの待ってるからな」
「「いってらっしゃい」」
声がよく響いて聞こえた夢。
映像はぐにゃぐにゃとしていてよくわからなかった気がする。
あれは多分、昔親の友人を訪ねてアメリカに滞在している時だ。
約一年半の滞在期間中、その友人宅に泊まっていたのだが、そのお隣さんの双子。
名前は何ていったかな?
4歳ぐらいであまり(というかほとんど)英語を話せなかった私と遊んでくれた数少ない友達だった。
英語も教えてくれたし、誕生日にこの緑の丸い綺麗な石のネックレスをくれた。
今も石の独特な深みのある色は気に入っていて常に身につけている。
そんな彼らとのお別れの場面だったはず。
再会の約束をして泣く泣く離れた。
そしてその3年後「おかえりなさい」を楽しみに再びアメリカへ渡った。
そこに彼らの姿は無く、約束は未だ約束のまま。
…なんでそんなこと今更思い出すんだろう。
そうえいば、ここの店主がその双子と同じ銀髪と青目だったからかもしれない。
あまり考え過ぎるとしんみりしてきそうだから浴室を出た。
「あの、シャワーお借りしました…」
あぁ、とふり返った彼は自分を見てまたくくっと喉で笑う。
用意されていた服は店主にとっては普通でも自分にとっては異常なサイズだった。
Tシャツはなで肩なのも手伝って肩がでてしまいそうだし、
ジーンズも丈を三度折って調節してもまだ少し引きずっている。
体が比較的に小さめな私へのイジメかと思わずにいられなかった。
「悪ぃ、これぐらいしか用意できなかったな」
とまたブーツの音をたてて距離を縮めてくる。
余裕の表情で近づいてくる店主と目が合わせるともう逸らせない。
先ほど経験して知っていた筈なのにあの目の蒼は綺麗で吸い寄せられてしまう。
どう行動するべきか戸惑っていると―
突然。本当に突然店主の不敵な笑みが消えて真剣な表情に変わった。
その視線は自分の首元に注がれている気がする。
「…?あ、の??」
「…そのネックレス…」
「え?」
彼が気にかけているのはネックレスらしい。
無言で見つめる彼の視線は痛いほど真っ直ぐだった。
「これって…」
扉の開く音がしたのはそのときだ。
「……客がいたのか」
裏口から入るべきだったという青いコートの男。
「オイ、これ見ろ!」
「なんだ」
青い男もこちらへ寄って来て店主の指すネックレスに視線を落とす。
その顔立ちは髪型こそ違えど店主と酷似していた。
(双子?……あれ?)
今、こんな風に三人で並ぶ状況を懐かしいと感じるのは何故?
青の男も一瞬だけ目を見開いて店主の方を向く。
二人とも言葉なしに視線だけで通じ合っている。
自分は何度もこんな場面を見たことがある。
というよりも私は彼らのことを知っている。
「「…?」」
二人の声が重なり優しく名を呼んだ。
嗚呼、今思い出した。
「ダンテ、バージル…?」
名前を呼んだだけなのに涙が溢れた。
みるみる視界は歪んでいってもう目前の二人の姿がまともに見えない。
今朝見た夢と同じだった。
「……っ…」
「…泣くな、」
「こういう時は泣顔より笑顔だろ?」
あの頃とは違い過ぎる大きさの二人の腕が柔らかく抱きしめてくれた。
「…ただいまっ」
止まらない涙も無視して笑う。
「「おかえり」」
顔は見えなかったけど、きっと二人も笑ってた。
‘どしゃ降り’の雨さん。
今日は運の無い日などと失礼なことをいいました。
今日が特別な日になったのは貴方のおかげ。
そんな最高の貴方へ
心からの敬意と感謝を。
あーあ。書いちゃったぁー(悔いるな、私)
いや、設定自体は大好きなのさ、気に入ってますよ?
唯、アタイに文才無いから…いい感じに成りきれてない…
やだなぁ、もう目からお水が…しょっぺいお水が…
これから先はモノクロの空様の「幼馴染で5のお題」より
ホノヴォノ(うあ。なんだこれ)書いて行くので
お題に恥じぬよう全力投球です。
期待値?限りなく0%に近い状態でお願いしますっ