君へ還す腕の力
「……なぁ」
「んー…何?」
「…私は…お前の、抱き枕か人形のようなものなんだろうか」
そういうはカダージュの腕の中にいた。
一,二時間前に帰ってきたカダージュはすぐさまに抱きついた。
いつも皆と眠る部屋で何をするとも無く座っていたは多少それに驚いたものの、
大人しくされるままに小さく零した。
「……おかえり」
「…ただいま」
その時、カダージュが穏やかな笑みだった事をは知らない。
「えー、こうしてるの嫌なの?」
「…いいや」
別に何とも思っていない、と思っているのがだ。
ただ何となく今の自分を比喩するならばそれが適当だった。
だからそう言って見ただけ、と。
それはカダージュには不満を零しているように聞こえたようだ。
首に腕をまわしたまま少し離れたカダージュの表情は膨れ面。
なんてわかりやすい。
他の兄弟もそうだが、は本当に自分と年が近いものなのか疑う。
そして同時にその幼さに惹かれていると思えた。
そっとあやす様にカダージュの髪を梳きながら呟く。
「……じゃ、ない」
「何?」
「…嫌、なんかじゃない」
目を真っ直ぐ見つめながら。
それは上手く言葉が紡げず、彼らの様に表情豊かでない自分でも、
ちゃんと意思が伝えられるようにが心がけている事。
不思議な輝きのアーノブルーもじっと見つめ返している。
「…うん、わかった」
その瞳が柔らかな弧を描く。
カダージュが浮かべるその表情に安堵の溜息が出た。
よかった、きちんと伝わっている。
「よかった…」
そう言葉にしたのはではなくカダージュの方だった。
「…?」
「に嫌がられたらどうしようかと思った…」
言いながら肩に顔を埋めるカダージュの腕の力は先程より強くなっている。
それに応えるように今度はもカダージュの背に腕をまわした。
他にどうすればいいかわからなかった。
何といえばいいのか浮かんでこなかった。
ただカダージュを想って腕の力を強めた。
ヤズーとロッズが帰宅したのはそれからまたしばらくしてから。
その光景が気に入らなかったのはヤズーの方だった。
一直線に二人の元へ駆け込み引き剥がそうとする。
「ちょ、何すんのさっ」
「から離れろ…!」
有らん限りの力でカダージュをを引っ張っても離れようとしない。
はというとその様子を無表情に見つめながら静かに言う。
「…二人とも、おかえり」
遅れて部屋に入ってきたロッズが大きな声で答えた。
「おぅ、ただいま!!」
「ただいま」
続くヤズーは声色を変えずに返しながらカダージュを引き剥がす事に全力を注ぎ続ける。
「もーっヤズーうざいから!」
「…離れないお前が悪い…っ」
互いに一歩も譲らぬ攻防戦を他所にロッズがに話しかける。
「なぁ、。俺お腹すいた」
「…そうか」
「うん、ハンバーグ食べたい」
緊張感のない会話にカダージュとヤズーが八つ当たりを始める。
「うるさい、ロッズを挽き肉にするよ!?」
「………」
「気持ち悪い事言うな、ロッズの肉なんて硬くて不味いに決まってる」
「……うっ…」
容赦無く貶されて小さく嗚咽するロッズ。
はそっとロッズの頭を撫でても喧嘩を止めようとはしない。
何とも思わないから、ではなくそれでも良いのだと思うから。
互いに傷付け合うことがあってもやはり仲の良い兄弟に見えるから。
わざわざ間に入る必要はないと、はそれを見守っている。
「いい加減あきらめてよ…!」
「いい加減離れろっ」
「……うぅっ…ー」
「「にすがるなっ」」
自分達のやり取りに夢中な兄弟は気付いていない。
がその様子を見て僅かながら口元を緩めている事を。
わーっ初背景黒っ!!(それがどうしたって言うんだろう…)
やっぱりFF7のイメージカラーが黒+ライフストリームの色だっと思って。
そして勝手に魔晄色をアーノブルーと判断して書いちゃったよ…
一応カッちゃんメインのつもりで書いた夢…だったのに
気が付けば3人勢ぞろいになり、喧嘩を始め、
最終的にロッズが泣かされるという書いてて楽しい展開にしてしまいましたっ
ごめんねロッズ、意地悪とかあんまりしたくないけど
君が泣くとこ好きなの。可愛いの。いいこいいこしたくなるの。
そして、ロッズはハンバーグとか大好きだと思います、絶対!