和やかな日曜日。

 「おはよう」というには遅いような、「こんにちは」でも早いような。

 そんな時間に母は眩暈を覚えた。

 目の前で満面の笑みの愛娘と机の上のピーチク鳴く物体に。

 

 ほんの数分前までは普通の日曜日だったのだ。

 週に一度しか作ってやれない料理に精を出し、今日は娘と何処へ出かけようと思索していた。

 目玉焼きを作り、トーストを用意し、スープを煮込み。

 娘の部屋が少し騒がしい気もしていたが、

 大したことがあるなら自分を呼ぶはずと料理に専念していた。

 最後に紅茶の準備も整い、テーブルへ運ぼうという時。

 「ママ!!」

 嬉々とした娘が部屋から現れた。

 両手にそれを抱えて。

 自分の目を疑うしかなかった。

 そしてどうか夢であってほしいと願った。

 が、自分の目がどうかしている訳でも夢である訳もなく。

 とりあえず落ち着けと言い聞かせて娘を座らせ、自分もテーブルの向かい側へ座る。

 そして出来る限りの笑顔で娘に尋ねた。

 「、これどうしたの?」

 「うん、あのね!」

 と娘は今までのいきさつを母に説明した。

 母はフェードアウトしそうな意識を無理やり戻し、娘に見られないよう顔を覆って涙した。

 (うちの可愛いが私に隠し事した…うちの可愛いが私に…)

 ずんと暗いオーラを纏った母に気づいた娘はまゆをハの字に謝罪した。

 「ママ、ママに内緒にしてごめんなさい…」

 「ううん、いいのよw」

 …娘の一言で暗いオーラはどこへやら。

 (そう、それに問題はそこじゃないのよ…)

 母は真剣な面持ちで机の上の生物を睨んだ。

 手のひらに収まるサイズの人型の生命体。

 銀の髪に青の瞳。

 そして背中に黒い翼。

 何故この存在に自分が気付けなかったのか、自分の情けなさを呪った。

 自分の中の血が訴えている。

 絶対に自分の考えが違える事が無いと確信させられる。

 (こいつら…)

 またに向けて笑顔をつくり尋ねる。

 「、これ何に見える?」

 「鳥さん!!」

 手を真っ直ぐあげて自信満々に即答する娘。

 その姿は愛らしいのだが、この子の目は大丈夫だろうかと不安にもなった。

 「なんで?」

 「だってね、背中に羽があるんだよ。

 パタパターって飛べるの。だから鳥さん!」

 特徴が一致するという点は納得。間違ってはいるのだけども。

 「でね、ママ…」

 母は次に来るだろう娘の言葉に耳を塞ぎたい思いだった。

 「この子達、が育てて良い?」

 (ダメっ)

 「頑張ってこの子達温めたの」

 (これだけはダメっ)

 「一生懸命お世話するから…お願い、ママ!」

 「…うん、良いよ」

 「本当!?」

 「…うん」

 娘の目を見てはいけなかった。

 真剣な表情かつ潤んだ瞳で見つめられたら…

 大事な愛娘のおねだりにNOはいえなくなっていた。

 そんな情けない自分を再度呪った。

 溜息を一つついてから飛び跳ねて喜ぶ娘に頼みごとをする。

 「今日の新聞がきてると思うから、下のポストまで取りに行ってくれる?」

 「はーいっ」

 勢いよく飛び出して行く娘を見届けてから空間に残された通称鳥2匹を睨む。

 「「………」」

 「………」

 娘との話し合いの間、雰囲気を読んでからか大人しくしていた2匹。

 今もまた母からの重圧に沈黙を守っている。

 「…もしかしなくともあんた達…」

 母が重い口を開いた。

 「悪魔ね?」

 

 「「………」」

 赤と青の2匹は目配せした後一声鳴いた。

 「(鳥じゃあねぇよ)」

 赤の方が意地悪そうな笑顔で答えた。

 「見れば分かるわ、それぐらい」

 「(娘の方は分からないらしいがな)」

 次は青が答えた。

 「あの子はまだ子供だもの。仕方ないじゃない」

 「(そーかい。それは置いといて、だ。

 アンタなんで俺らの言葉がわかるんだ?)」

 「………」

 はたから聞くと唯ピィピィ鳴いてるだけに聞こえる二匹の言葉を理解する理由。

 普通の人間が解せる言葉でないことは明白だった。

 深く溜息をついた母はゆっくりとした口調で述べた。

 「私が魔女だから」

 告白に降りてきた沈黙が重たい。

 しばらくしてから赤がそれを壊した。

 「(へぇ〜、娘の方は魔女じゃないのか?)」

 「(…言葉を解しているようには見えなかったな)」

 青が疑問を言葉にする。

 母はそれに当然とばかりに返した。

 「あたりまえよ。はまだ力が目覚めてないし、自分が魔女だっていう自覚すらないもの」

 納得したのか青はふんと顔を背けて黙った。

 母は娘と同じ黒い髪を荒くかきあげて次に続けるべき言葉を考える。

 「…もう許しちゃったことだからここから出て行けとは言わないわ。

 ただし…もしを傷つけたら……」

 音がした。擬音語にすればバチバチといった感じがしっくりくる。

 蒼の電流が魔女の全身を覆うように走っていた。

 口元は笑っているが眼は冷たく二匹を見据える。

 重すぎる圧力が悪魔にのし掛かる。

 「…落雷のせいで丸焦げになるかもネ」

 その笑顔は余りにも残酷でした。

 タイミングよくドアの開く音と足音がする。

 「ただいまーっ新聞あったよ、ママ」

 「はい、お帰り。ありがとね、

 先ほどの禍々しい雰囲気は何処へ行ったのか。

 が出て行ったときと何ら変わらない母が笑顔で迎える。

 が、魔女の洗礼を受けた二匹はどこか青ざめていた。

 背中の翼を羽ばたかせ、勢いよくに飛びつく。

 「??どうしたの、ダンテ?バージル?」

 「ダンテとバージル?」

 聞きなれない言葉に母がオウム返しをする。

 「この子達の名前だよ。

 赤い弟の方がダンテで、青いお兄ちゃんの方がバージル」

 二匹を両腕に抱きながら微笑む。

 「…なるほどね。いい名前じゃない」

 幸せそうに笑う娘に微笑み返す。

 正直これから先不安ではあるが、この子なら大丈夫な気がしてくる。

 (これが錯覚ではないように…)

 娘に気付かれないよう静かに心の中で祈った。

 「これからよろしくね、ダンテ、バージル!」

 二匹にも不安が募った筈なのだが今は小さな魔女の腕の中でどこか安らぎを得ていた。

 「(ぉう、頼むぜ魔女っ子)」

 「(ふん…)」

 こうして無事(とはいい難いが)母上の許可を得た悪魔達は家族構成の中に加わることになった。











 これで今日から僕らは家族。
 
 言い訳を…っ!!
 ホントにどうしようも無いけど言い訳を……っ!!
 えっと、千の思考回路順です。
 ヒロインとチビ’sは言葉が通じないほうが良い
 →でもチビ’sの言葉を理解できる人が欲しいなぁ…
 →ママさんが分かればいいっ
 →でもどういう理由でチビ’sの言葉を理解できれば良いんだ……?
 →あ、魔女ってことにしたら悪魔の言葉理解できても変でない?
 で、こうなったんです。
 じゃあ必然的にヒロインも魔女っ子になるんですが。
 一応目的があった上で魔女な設定になったんです。
 それを知って欲しかったんです。