「






 突然に呼ばれる名前に反応が遅れるのは



 空を眺めることに一生懸命だったからではなく



 そうなればいいと思っていたことが本当にそうなりそうことに



 酷く喜びを覚えたからなのです








 「…んー?」








 彼がこういう時どうするのか解かってしまうのですが



 あえて間延びした返事をします








 「行くぞ」








 たった一言返ってきます



 ただそれだけで十分なのです



 彼がどうやって感知するのか知りませんが



 私が‘散歩日和’だと思ったことを



 彼は解かってしまうのです








 「……うん」








 彼が本を閉じる音を合図に簡単な身支度を始めます



 風が冷たく感じられるようになって来た頃です



 上着を羽織ると玄関で待つ彼を追います



 鍵をかけている間に



 彼は二、三歩先へ進んでいます



 向けられた背を見ると何となく解かってしまうのです








 「バージル」








 突然に呼ばれる名前になかなか反応が遅いのは



 それに驚いたからではなく



 そうしたいと思っていたことが本当にそうなろうとしていることに



 酷く喜びを覚えたからでしょう








 「…どうした」








 私がこういう時どうするのか解かってしまうはずなのに



 あえてそう尋ね返してくるのです








 「………」








 何も言わずに彼の右手に自分の指を絡めます



 ただそれだけで十分なのです



 少し照れ屋な彼のことです



 彼が‘手を繋ぎたい’と思っていても



 彼からその手を伸ばせないのを私は解かってしまうのです

 








 「落ち葉キレイだね」



 「ああ…踏んで歩くのが好きだろう」



 「…うん、好きー」



 「



 「ん、こけないよ
 心配性だね、バージルは」



 「…そうか」





空気伝染








 声にしなくても聞こえてるよ。
 なんとなくだけどさ。
 わかっちゃうから。

 
 airの2作目。
 ってあんまり余計な事書くとこの作品の雰囲気自分が壊すなーって思って
 (うるさい)あとがきは白くしてみたり(苦笑)
 うん、書いてて楽しいです。
 目は口ほどにものを云う…と、ありますが。
 口でなくたって、目でなくたって。
 例えば背中で。例えば掌で。
 例えば呼吸で。例えば足音で。
 あらゆる事、あらゆる物で、語ってると思います。
 そういうものを感じ取れる雰囲気な二人。
 ひと時でもそれを味わえたらなって。
 にしてももうちょっと早くUPすればよかった。
 もう上着無いと寒すぎておでかけ出来ないっ