私にとって彼は空気のような存在なのです

 
 
 彼の読書の特等席は二人で眠るベッドサイド

 
 背をそれに預け冷たいフローリングに足を伸ばすのが好きなのです

 
 そういう私の特等席はベッドに縋る彼の右肩

 
 背をそれに預け何をするとも無くベランダの窓から空を見るのが好きなのです

 
 流れていく雲、差し込む日差しを眺める内にふと思い出したように尋ねます

 
 
 
 
 「……バージル」

 
 
 「…何だ」

 
 
 
 
 いつでも同じ質問を

 
 
 
 
 「…………重くない?」

 
 
 
 
 それが少し、くだらなく感じて少し口元が緩みます

 
 彼も間を置いて返します

 
 
 
 
 「ああ、全く」

 
 
 
 
 いつでも同じ返答を

 
 私は空に視線を向け続けて振り返ることをしないのだけれど

 
 彼も柔らかく笑んでいたでしょう

 
 
 
 
 「…嘘吐きめ」

 
 
 「嘘じゃない」

 
 
 
 
 いつだって全身の力を抜いてこの身を彼に預けているから重くないはずないのに

 
 彼は軽く罵れば即座にそれを否定するのです

 
 そうしてまた互いに口を閉じ

 
 彼は本に、私は空に、視線を注ぎ続けるのです

 

 
 そうして彼と共に過ごす時間というのは静かで、穏やかで

 
 それはそれは幸福と称すに相応しいのです

 
 たとえ他からみれば恋人同士に見えずとも

 
 彼という存在が隣に在る事が特別でなく

 
 あたりまえであるような

 
 
 そう、まるで空気のような

 
 
 そういう位置付けでいられることが

 
 これ以上無い程に



 空気力学的幸福
 

 
 
 
 
 





 
夢小説なのに名前変換が無いという夢。(ああ、やってしまった)
 でも書いてて楽しいんです。私の理想の恋人像その1です。
 もちろんいちゃいちゃするのだって好きですよ、恋人なのだし。
 でもそういうカタチでなくてこういう雰囲気のカップルって素敵だなって。
 そういう風に思って書いた夢です。
 タイトルは何となく。
 今後もairシリーズと称してこういう夢を書いていこうと思います。
 次は名前変換活用しますよっ