夕方、目に沁みるような赤が二人を照らしている。


 今夜の夕食の買出しに赴くに荷物持ちとして付いて来たバージルの手には大きな紙袋。


 とても今晩だけじゃ使い切れない量の食材がぎゅう詰めにされている。


 買い物の最中も側を離れずにカゴに詰められる食材を見ていたバージルだが今夜の食事が何になるかはわからなかった。


 隣を並んで歩くの手にはバージルの持っている袋の半分よりまだ小さいもの。


 中には夕日に負けないぐらいの赤。





 
「明日のおやつにアップルパイ焼こうか」





 と、嬉しそうに実を手にとった彼女の笑顔をバージルははっきりと覚えている。


 リンゴが三つ、レモンが一つ、それからシナモン等といったアップルパイに必要な材料しか入っていない袋。


 さほど重いように思えないものでも、あの手が支えるとなると困難な気がするのは自分が過保護なのだろうかとバージルは思う。


 横目で様子を窺えばいつも通りの笑みが浮かんでいる。




 …考え過ぎ、なんだろうな。




 自身に苦笑しても、それを表には出さない。


 もう一度斜め左に視線を落とす。


 いつもの柔らかい笑み。


 でもその色は世界に負けないぐらいの赤。






 「………」






 気に入らない、と言葉にしそうになる口を閉じる。


 自分の片割れを思い出させる嫌な色に自分も、彼女も染まっている。


 その中で微笑む彼女が奴を享受しているように見えて。




 …考え過ぎ、だな。




 気付かれまいと小さく溜息をついた。








 「バージル?」







 気付かれてしまった。


 足音で消えるようにという考えは甘かったらしい。


 明日の楽しみで一杯の袋をしっかり抱えながら瞳はバージルを捕らえている。




 「…なんだ?」




 「……溜息ついたからね、どうしたのかなぁって」




 「なんでもない」




 「…ならいいんだ」




 会話が途絶えるとまた二人の足音だけになる。


 先と変わらない沈黙の中、もどかしさだけが募っていく。






 「バージル」






 名前を呼ばれるより左手に温もりを感じる方が早かった。


 指と指が絡まるように繋がれた手に神経を注ぐ。


 力を込めれば簡単にへし折れてしまいそうな右手。




 「……




 「んー?」




 「…何もない」




 ならいいんだ、とくすくす笑う彼女の右手を握り返した。


 傷つけないように、でも離れないように。

 

 

24.
さくてりたい

 


 
関係ない、君が何色に染まったって。
 僕の手の内にある容易く消えてしまいそうな温もりは。
 誰でもない、僕が守ってみせるだけ。


 SSと、いうことで…めっちゃ気の向くまま思いつくままに。
 これだったら合間合間で作ってできるだけ早く更新できるかなぁって。
 手を抜いてるつもりはないですよっっ
 ただ、駄作なだけで…orz
 どうしても更新遅くなりがちですが、
 やっぱり文章書くのは好きなんで頑張って行こうと思います。
 こんな管理人でこんな小説しか書けませんがなにとぞよろしくお願いしまする。